事業I ESD技術に基づくナノテク製品
 エレクトロスプレーという現象は、先端のとがった容器に高電圧を加えることで電界集中により液体がスプレーされる現象です。
エレクトロスプレーデポジション法(ESD法)は、各種高分子やポリマーの溶液をエレクトロスプレーしナノサイズのパーティクルやファイバー(ナノファイバー)を形成させながら、静電気力を利用して基板などに堆積・固定させる手法です。
 エレクトロスプレーは非常に複雑な物理現象であり、そのすべての過程が解明されてはおりませんが、一般的には次のような現象と考えられています。サンプルは細いキャピラリーに収められ、これと対向する電極に対して数千~数万ボルトの電圧を印加します。 キャピラリー先端では電界集中の効果により強力な電界が発生し、液体表面に荷電を持つイオンが集まります。さらにこの先端から液体が表面張力を打ち破りジェットとなります。ジェットは強く帯電しており、静電気力の反発によりスプレーとなります。スプレーにより形成された液滴は非常に小さく、短時間のうちに溶媒が蒸発乾燥し、微細なナノパーティクルとなります。この帯電した微細なパーティクルは、静電気力により対向電極に引き寄せられ、堆積するパターンは、絶縁体マスクや補助電極により制御することが可能です。

エレクトロスプレーの原理図

構造体の例

エレクトロスプレーの原理図

ナノファイバー

ナノファイバー写真

ナノ粒子

ナノ粒子写真

ナノ薄膜

ナノ薄膜写真

マイクロパターニング

マイクロパターニング写真
1.特徴
エレクトロスプレーデポジション法は
  • (1) 有機・無機・生体高分子・合成高分子などさまざまな物質の溶液や分散液をスプレーし、種々のナノ構造体をデポジットすることができます。
  • (2) 常温、常圧にて行われるプロセスのため、サンプルに対するダメージが比較的少ないままで保たれます。
  • (3) ナノメータサイズのパーティクル、ファイバーを形成することができます。
  • (4) 静電気力を利用してデポジションのパターニング制御が可能です。
  • (5) 広い面積にもナノ構造体を形成することができます。
  • (6) ドライデポジションが可能なため、ウェットデポジションに伴う種々の問題は生じません。 また条件を変えればウェットデポジションや溶液のスプレーも可能です。
2.応用
(1)ナノファイバー
多くの水性・有機溶媒のポリマー溶液・分散液に適用できます。ESD法により形成されたナノファイバーは、高性能フィルターとして既に商品化され、不織布、触媒担体、高性能メンブレン等として使用可能であり、繊維産業のみならず、電子部品、高性能バッテリーからバイオ産業、医療産業等でさまざまな用途開発が進められています。

ポリアクリロニトリル(PAN)によるナノファイバー形成例

ナノファイバー写真 ナノファイバー写真

平均繊維径128nm、CV値12.8%

フィルター表面へのナノファイバーコーティング

(2)薄膜
ナノファイバーやマイクロ粒子は様々な薄膜に使われており、その用途・需要は更に広く強くなっています。 特にマイクロ/ナノ粒子からなる薄膜は、材料や用途が多様になるだけでなく、 精度の向上・コストの削減が進められています。
(3)ナノコーティング
エレクトロスプレーデポジション法により形成されるパーティクルは数十nm以下に小さくすることも可能であり、 これを利用して各種コーティングを行うことが可能です。コーティングに用いられる材料としては、 各種合成高分子や生体高分子(タンパク質など)があります。コーティングの厚さはナノメータレベルで制御することができ、 基板材料も平面的な基板のみならず静電気力を利用して複雑な形状にコーティングすることも可能です。

有機薄膜コーティングの断面と表面粗さ

ナノコーティング写真
(4)マイクロパターニング
エレクトロスプレーデポジション法に絶縁体マスク等を用いることで、静電気力によりデポジションのパターンを制御することができ、 線状、スポット形状、ストライプ形状や任意の形状のデポジットを形成することができます。デポジションの分解能は、 条件によっては数マイクロメーターまで可能です。 基材の性質や目的に応じ、マスクを用いる方法だけでなくマスクを用いない方法でも行います。 このパターニング技術を利用して、様々な電機製品の要素材料・部品、マイクロ流体チップへのタンパク質の固定、 生分解性ポリマーの様々な形状での固定、などを行うことができます。 

マイクロパターニングの例

マイクロパターニング写真 マイクロパターニング写真
3.製品
当社は現在までに蓄積してきたESD技術・装置の経験・ノウハウを基に、 種々の新しいナノファイバー製品の開発を進めてきました。 ポリイミドナノファイバーの製造販売を行っています。
ポリイミドナノファイバーシート
ポリイミドナノファイバーシート

特徴

溶媒可溶性のポリイミド系ポリマーも増えてきたので、複数のナノファイバーを 用途に応じて使用しています。

◇ 溶媒可溶性
溶媒可溶性ポリイミド(PI)のため、他のポリマー同様にESD法にて容易にナノファイバー化が可能です。

◇ 高耐熱性
ナノファイバー化(三次元多孔構造)しても十分な耐熱性と高いガラス転移温度を有します。

◇ 断熱性・絶縁性
ナノファイバー不織布にすることでフィルムよりも大幅に熱伝導率を下げることに成功しました。フィルムと遜色ない絶縁性も有します。

◇ 耐水性・透湿性・通気性
用途に応じてポリイミドを選択し、より高機能の組合わせを実現いたします。

◇ 柔軟性・薄膜化
不織布シートのため薄くて柔軟性に富み、加工も容易です。

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